千里敬愛幼稚園では1学期は「経験の学期」2学期を「充実の学期」、3学期を「完成の学期」と位置づけています。
「保育発表会」で、学年毎のしめくくりを行ないます。発表会は単に何かを演じるものを見せるのではなく、一年間の保育で成長した子ども達の姿を見ていただきます。
しかし、もちろん、保護者の方に見せることが目的ではなく、子ども達が自らの能力を発揮しているのを見させてもらう会であるのは、2学期の運動会などと全く同じです。
すでに千里敬愛幼稚園の発表会をご存知の方には蛇足になりますが、初めての方のために、少し詳しく説明します。
1)子ども達と一緒に考えて活動します
千里敬愛幼稚園の発表会は、最初から台本があったり、動きや表現を指導者が決め、子ども達に教える活動ではありません。
作品の構成と選曲は担任が前もって行ないますが、ひとつひとつの動きや台詞などは、年長児や年中児の場合、ほぼ100%子ども達から出たものです。経験差によって、その比率は低くなるものの、年少児だって、それぞれの考えを作品の中で表しています。
自分達が考えた表現や台詞が取り上げられて、ひとつの作品になるのですから、自分達で作った作品だとの意識は驚くほど高まります。
ある場面で表現に行き詰まったとします。すると、子ども達は家で考えて、翌日、「先生、こうしたらカッコいいで」と言ってくれることもしばしばです。
人前で発表したり、自分の考えが取り上げられたことで、積極性が一層育ったり、友達との意見に折り合いがつかず、悔しいながらも妥協したりと、教育の場としての効果も如実です。
②全員が主役です
誰だって主役をしたいものです。ところが、お母さんの中にも、幼い頃、お姫様役をしたかったのに、その他大勢の蝶々で、一言だけの台詞しか言えなかった悲しい思い出しか残っていない方もおられるのではないでしょうか?
これでは、最初から活動への意欲を阻害してしまいます。園によれば、場面毎に役を変えて対応していますが、それすら不十分です。全員がお姫様にはなれないのですから。
千里敬愛幼稚園の子ども達は幸せです。全員が主役になれるのですから。
???
全員が主役なら劇にならないじゃないの?
心配はご無用です。そこに私達の発想のユニークさがあります。
「今日、○○ごっこをして、私、お姫様になったの」との会話はきっと聞けるはずです。
2)普段の保育が経験として活きます
「行事保育」をしている園では、行事前になると泥縄式の指導を子ども達を急き立てながら行なうのが常です。運動会で行なう鼓笛パレードなどは、2学期が始まってからでは間に合わないから、1学期から始める園もあります。そして、そのような園は、「子ども達の負担を少なくする無理のない指導」と言うものの、事実は「やらせ」の期間が長いだけです。
積み重ねとは、練習の繰り返しではありません。新たに生じた問題や、初めて出会う局面で、どう対応すべきかの能力を育てることです。「応用力」を身につけることです。
先にも述べたように、私達は日常の保育で、音楽を聴いて動きを創り出したりする能力を育てる活動、クリエイティブ・ムーブメント(*)やリズム・バリエーション(**)を年間を通じて行なっています。
ですから、泥縄的な指導ではなく、じっくり子ども達の表現を引き出す余裕を持って活動が進められます。
*クリエイディブ・ムーブメント
子ども達の日常的な動きの一部にスポットを当て、子ども達のいろいろな表現を引き出す遊び。
**リズム・バリエーション
音楽に合わせてステップを踏み、リズム感、フレーズ感(音楽の流れ)、ダイナミクス(強弱等)
を知らせる遊び。リトミックが音楽の理屈を動きを通して知らせようとするあまり、低年齢の子ども達には退屈だが、リズム・バリエーションでは、子どもの感覚に直接訴えるので、年齢に関係なく楽しめる。また、経験を積むと音楽を感じて子ども自身がステップを工夫できるようになる。
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3)年齢に応じた活動内容です
発表会当日は、すべての学年の発表を見ていただけます。ご自分のお子さんの発表だけではなく、是非、他の学年の作品もご覧下さい。如何に整然と年齢毎の配慮がされているかがご理解いただけるでしょう。
入退場、小道具の使用、台詞の量、隊形など、子ども達の年齢と経験を充分に配慮し、子ども達に負担なく、充分に自己表現が楽しめる配慮を随所で行なっています。
その中から特徴的な点についてお話します。
◆役 割
年少では、作品を通して原則、全員でひとつの役を演じます。いくつの役をする場合でも、全員が同じ役を行ないます。こうすることにより、今、自分が何をしなければならないかが常に理解できますし、待機の時間もなくなります(グループに分かれて他の子ども達の表現を見る場合はあります)。
但し、子ども達の状態を見て可能だと判断したら、2つの役に分かれて表現することもあり、最近はこの傾向が強いです。それでも、最初から役を分けて行なうことはなく、最初の段階ではそれぞれの役で遊びます。
年中、年長では最初から役を決めていきます。しかし、場面が変わると違う配役になるし、表現を考える際は自分の役以外にもなって見せ合いっこをします。
これらの配役すべては子ども達の立候補で決めていきます。
◆小道具や入退場
年少でも小道具を使う場合もありますが、原則使いません。何故なら、それだけで混乱してしまうからです。小道具を見つけられなかったら、他の学年なら持たないまま臨機応変に表現を続ける柔軟さがありますが、年少だとそうはいきません。絶対に全員が見つけられるような配慮は当然なのですが、それよりも、使わなくても良いなら使わないを原則にしています。だって同じ小道具でもどれが良いか選んでいる子もいるんですから!
入退場も充分な配慮をします。発表会までは園長が毎回子ども達の活動を見ていますが、年少の入退場は園長の許可が下りるまで子ども達に指導してはいけないことになっています。
それは一度覚えた入退場の場所が好ましくないと園長が判断して手直しするとなると、年少児は混乱してしまうからです。以前の入退場の場所を消し去れないのです。
入退場や隊形は経験のない子には大変厄介なことです。いや年長児でも、大まかな流れが充分理解していない段階でこれらの要素ばかりに気をとられて指導すると子ども達は混乱してしまいます。
すなわち、活動を進める段階で、如何に子ども達の障害を取り除いてあげるかが、子ども達が楽しく活動できる大きな要因です。
活動の流れを把握すると、複雑な入退場、小道具の準備などを時間内にするのを楽しんでいるようで、ある園の先生は子ども達の舞台裏の姿を見るのが好きだとさえおっしゃっていました。自分達で次の出番の段取りをしている姿はとても頼もしいものがあります。
◆進め方
年少の進め方はユニークです。
普通、劇遊びなどでは、当然のように作品の最初から作り始めます。ところが千里敬愛幼稚園では、子ども達の好きな場面から始めます。何故だと思われますか?
子ども達の関心は、必ずしも物語の最初ではないからです。発表会の経験がないから、子ども達が楽しめる場面から行なうことで興味を高める効果が生まれます。
また、ストーリーだけを追っていると、子ども達の表現を充分に引き出せません。子どもの好きな場面で充分に表現を引き出すと、より意欲的に活動に参加してくれます。
年中や年長は、最初の場面から順番に取り組みます。作品が完成したときの楽しさを知っているので、途中で表現が行き詰まっても解決するだけの意欲を持っているからです。
最後まで出来た瞬間の子ども達の歓声をお聞かせしたいほどです。 |